ターミナルケア加算とは?算定要件や対象サービス・看取り加算との違いについて解説
ターミナルケア加算は、終末期の利用者に対して適切な看取りケアを提供した事業所を評価する介護報酬です。
訪問看護や定期巡回、看護小規模多機能型居宅介護、介護老人保健施設など、サービスごとに算定要件が異なるため、正確な理解が欠かせません。
本記事では、ターミナルケア加算の基本的な考え方から算定要件、混同しやすい加算との違いまで、実務で押さえるべきポイントを詳しく解説します。
| 【本記事でわかること】 ・ターミナルケア加算の目的と利用者の考え方 ・ターミナルケア加算の算定要件【サービス別】 ・ターミナルケア加算を算定するときの留意点 ・ターミナルケア加算と混同しやすい加算との違い |
ターミナルケア加算についての疑問を網羅的に解説しているため、ぜひ最後までご覧ください。
なお、在宅サービスだけでは支援が難しくなってきた場合や、ご家族負担の増大により療養環境の再調整が必要な場合は、「ホスピス型住宅」も選択肢の一つです。
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ターミナルケア加算とは

ターミナルケア加算とは、一定の介護サービスで、終末期の利用者に対して所定の要件を満たす看取りケアを行った場合に算定できる介護報酬です。
本章では、ターミナルケア加算の基礎となる以下の項目について解説します。
| ・加算の目的 ・対象となる利用者の考え方 |
制度の根本的な考え方を整理し、どのような状態の方が対象となるのかを具体的に把握していきましょう。
加算の目的
ターミナルケア加算が設けられている主な目的は、住み慣れた地域で最期を迎えたいという利用者の希望を叶えるため、事業所側の看取り体制の構築を後押しすることです。
終末期のケアを支える事業所には、以下のような大きな労力と責任が伴います。
| ・緊急時の対応:頻繁な訪問や夜間・休日の緊急対応体制の確保 ・連携体制の構築:医療機関やケアマネジャー、他職種との綿密な情報共有 |
上記のような手厚い支援を継続するには、十分なスタッフ配置が欠かせません。
質の高いターミナルケアを提供する事業所を報酬面から評価することで、経営的な負担を軽減する役割を担っています。
事業所が積極的に看取りに取り組める環境を整えることが、利用者の穏やかな療養生活の実現につながっていくでしょう。
対象となる利用者の考え方
ターミナルケア加算の対象となるのは、医師が「回復の見込みがない」と判断し、終末期(ターミナル期)にあると診断された利用者です。
加算の対象となるための具体的な要件や考え方を、以下の表にまとめました。
| 項目 | 具体的な内容・条件 |
|---|---|
| 対象疾患 | がんなどの特定疾患に限定されず、老衰や認知症の進行なども含まれる |
| 医学的判断 | 主治医が医学的知見に基づき、回復の見込みがない(終末期)と判断する |
| 必要な手続き | 終末期のケア方針や内容について、ご本人やご家族へ十分な説明を行う |
| 同意の取得 | 説明内容に納得いただいたうえで同意を得る |
医師の診断が下されただけで、自動的に適用されるわけではありません。利用者とご家族の意思を尊重し、双方が納得した上でケアを進めるプロセスが前提です。
手続きの抜け漏れがないよう、要件を一つずつ確認しながら進めていく必要があります。
ターミナルケア加算の算定要件【サービス別】
ターミナルケア加算の算定要件は、提供するサービスの種類によって満たすべき基準が異なります。
各サービスに共通して「主治医との連携」「利用者やご家族への説明と同意」「看取りに関する記録の整備」が定められていますが、訪問回数や連絡体制などの細かな条件に違いがあるため注意しましょう。
本章では、以下の4つのサービス別に算定要件を解説します。
| ・訪問看護ステーション ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ・看護小規模多機能型居宅介護 ・介護老人保健施設(老健) |
ご自身の事業所がどの要件に該当するのかを正確に把握し、漏れのない体制づくりを進めてみてください。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションにおけるターミナルケア加算の算定は、24時間いつでも連絡が取れる体制を確保し、看取りの直前期に重点的な訪問を行うことが基準として定められています。
具体的には、以下の条件を満たす体制づくりを進めてみてください。
| ・24時間連絡できる体制を確保し、必要に応じて訪問できること ・死亡日および死亡日前14日以内に、2日以上ターミナルケアを実施すること(特定疾患等の場合は1日以上) ・支援体制についてご本人・ご家族へ説明し、同意を得ること ・身体状況の変化やケアの経過を訪問看護記録書に適切に記載すること |
また、2024年の介護報酬改定により、従来の2,000単位から2,500単位へと引き上げられ、看取りへの評価がより手厚くなりました。
※出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
日々の細やかな記録と、ご家族への精神的なサポートも含めたケアの充実が、スムーズな算定への近道といえるでしょう。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護における算定要件は、訪問看護と多くの共通点を持っていますが、対象者が要介護1~5の方に限定される点が異なります。
※要支援の方は対象外
主な算定要件は、以下のとおりです。
| ・24時間連絡できる体制と、必要に応じた訪問体制を整備していること ・死亡日および死亡日前14日以内に、2日以上ターミナルケアを実施していること ・ターミナルケア体制の届出をあらかじめ自治体へ行っていること ・計画内容をご本人・ご家族に説明し、同意を得ていること |
なお、ターミナルケアを実施中に容態が急変し、医療機関へ緊急搬送された後、24時間以内に死亡が確認されたケースでも算定の対象に含まれます。
ご家族が不安を感じやすい夜間や休日のサポート体制をしっかりと構築し、安心感を高める工夫を取り入れましょう。
看護小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)における算定要件も、基本的には訪問看護や定期巡回と同様に、死亡日前14日以内の訪問回数や24時間体制の確保が軸として設定されています。
要件のポイントを整理すると、以下のようになります。
| ・24時間の連絡体制と、必要に応じた訪問体制が確保されていること ・死亡日および死亡日前14日以内に、2日以上のターミナルケアを実施していること ・ケア計画について説明と文書による同意を得ていること ・身体状況の変化など必要な事項が適切に記録されていること |
看多機の場合、ご自宅への訪問だけでなく、施設での宿泊や通いを組み合わせた柔軟なケアが可能です。
事業所内での看取りと在宅での看取りのどちらにおいても、途切れないケアを提供し、ご本人の意思に寄り添う対応を意識してみましょう。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)でのターミナルケア加算は、訪問系のサービスとは異なり、施設内での多職種連携による看取り計画の作成と実施が要件の柱として据えられています。
算定に向けて満たすべき主な条件は、以下の3点です。
| ・医師が医学的知見に基づき、回復の見込みがない(終末期)と判断していること ・ご本人またはご家族の同意を得て、ターミナルケアに係る計画が作成されていること ・医師、看護師、介護職員、支援相談員などが共同して随時説明を行い、同意を得ながらケアを進めること |
また、老健における加算の単位数は、死亡日からの期間に応じて以下のように細かく設定されています。
| 死亡日からの期間 | 単位数 |
|---|---|
| 死亡日 | 1,900単位/日 |
| 死亡日前日・前々日 | 910単位/日 |
| 死亡日4〜30日前 | 160単位/日 |
| 死亡日31〜45日前 | 72単位/日 |
多職種が一丸となって最期まで利用者の尊厳を守る体制を整え、ご家族への細やかな進捗共有を取り入れていきましょう。
ターミナルケア加算を算定するときの留意点
ターミナルケア加算を適切に算定するには、同意の取得手順や記録の整備など、細かなルールを正確に順守する姿勢が重要です。
単に要件を満たすだけでなく、終末期というデリケートな時期に寄り添う配慮が欠かせません。
実務上で特に注意したいポイントとして、以下の4つが挙げられます。
| ・利用者・家族への説明と同意取得 ・医師の診断と利用者意向の把握 ・多職種連携と記録整備 ・搬送後24時間以内に死亡した場合の扱い |
算定漏れや事後のトラブルを防ぎ、質の高いケアを最後まで継続していくために、それぞれの留意点を詳しく確認していきましょう。
利用者・家族への説明と同意取得
後々のトラブルを防ぎ、ご本人とご家族が納得してケアの方向性を決めるために、事前の丁寧な説明と同意の取得が算定の必須条件として定められています。
単に口頭で状況を伝えるだけでは要件を満たさないため、どのようなケアを提供するのか、急変時にどう対応するのかを具体的に話し合うステップを踏むと良いでしょう。
そのうえで、説明内容と同意の経過を適切に記録・保存することが重要です。
利用者の判断能力が低下しているケースも想定されるため、早い段階からキーパーソンとなるご家族を交えて話し合いの場を持ちましょう。
医師の診断と利用者意向の把握
ターミナルケアを開始する起点は、主治医による「回復の見込みがない」という医学的な判断と、利用者がどのような最期を迎えたいかという意思確認の2つを適切に擦り合わせることにあります。
医師から終末期であるという客観的な診断を受けた後、利用者やご家族がどのような療養生活を望んでいるのか、丁寧に意向を汲み取っていくプロセスを踏みましょう。
病状の進行に伴って気持ちが揺れ動くことも多いため、一度確認して終わるのではなく、折に触れて意思の変化に耳を傾けることが大切です。
医療の見立てと利用者やご家族の思いを、適切に結びつける役割を意識しましょう。
多職種連携と記録整備
関わる全てのスタッフが一貫したケアを提供し、算定の根拠を明確に残すために、医療・介護の多職種間での綿密な情報共有と詳細な記録の作成が欠かせない要素です。
終末期は容態が急変しやすいため、医師やケアマネジャー、訪問介護員などと日々の小さな変化を共有する体制を整えておくとスムーズです。
また、記録書には以下の項目を具体的に記載しておきましょう。
| ・ご本人の身体状況や痛みの度合い、症状の経過 ・ご本人とご家族の心理的な状態や生活面の変化 ・提供した具体的なケア内容と他職種との連携状況 |
訪問ごとの細やかな記録が、質の高い支援を継続してきた客観的な証明となり、将来的な実地指導などにおいて適切な対応を証明する手立てとしても役立ちます。
搬送後24時間以内に死亡した場合の扱い
在宅での看取りを前提としてターミナルケアを行っていた方が、容態の急変により医療機関へ搬送され、その後24時間以内にお亡くなりになった場合でも、特例として加算の対象に含まれます。
※上記の取扱いは主に訪問看護等のルール
ご自宅で最期を迎える準備を進めていても、いざ苦しそうな様子を目の当たりにすると、ご家族がパニックに陥り救急車を呼んでしまうケースは珍しくありません。
このような予測不能な事態が起きても、事業所がそれまで提供してきた手厚いケアの過程がしっかりと評価される仕組みとなっています。
万が一の搬送に備え、あらかじめ緊急時の連携ルールを取り決めておくと、事後のフォローを円滑に進められるでしょう。
ターミナルケア加算と混同しやすい加算との違い
ターミナルケア加算と他の似た名称の加算は、算定できる介護サービスの種類や、評価の対象となるケアのプロセスに明確な違いが設けられています。
名称が似ていて迷いやすい制度として、以下の2つとの違いを解説します。
| ・ターミナルケア加算と看取り介護加算の違い ・ターミナルケア加算とターミナルケアマネジメント加算の違い |
それぞれの加算が持つ役割や適用されるサービスを正しく区別することで、算定漏れを防ぎつつ、適切なサポート体制づくりに役立つでしょう。
ターミナルケア加算と看取り介護加算の違い
ターミナルケア加算が主に「医療的なサポート」を評価するのに対し、看取り介護加算は施設での「日常生活を通じた看取り」を評価する制度です。
| 項目 | ターミナルケア加算 | 看取り介護加算 |
|---|---|---|
| 主な対象サービス | 訪問看護、定期巡回、看多機、老健など | 特養、特定施設、グループホームなど |
| ケアの中心となる職種 | 医師・看護師・介護職等の多職種 | 介護職員や生活相談員など |
| 評価の視点 | 医療的な苦痛緩和や終末期の処置 | 穏やかな日常生活の維持とご家族への支援 |
ターミナルケア加算は、医療機関や看護スタッフによる専門的な処置が算定の軸に据えられています。
一方で看取り介護加算は、介護施設において、介護スタッフが利用者に寄り添いながら最期まで生活を支える過程を重視する仕組みです。
ターミナルケア加算とターミナルケアマネジメント加算の違い
ターミナルケア加算が「直接的なケアの提供」に対する報酬であるのに対し、ターミナルケアマネジメント加算はケアマネジャーが行う「計画の調整や連携業務」を評価する仕組みです。
| 項目 | ターミナルケア加算 | ターミナルケアマネジメント加算 |
|---|---|---|
| 算定する事業所 | 訪問看護ステーション、看多機など | 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー) |
| 評価の対象となる業務 | ご本人への医療処置や身体的なサポート | 主治医との連携やケアプランの頻繁な見直し |
| 役割の目的 | 苦痛を和らげ、穏やかな最期を直接支えること | 適切なサービスを組み合わせ、環境を整えること |
現場で実際に手を動かして利用者を支えるのが、ターミナルケア加算の対象事業所です。
そして、そのケアが円滑に進むよう、背後で医療機関や各サービスを繋ぎ合わせるのがターミナルケアマネジメント加算の役割となります。
ターミナルケア加算に関するよくある質問
ターミナルケア加算の算定ルールには複雑なケースも多いため、イレギュラーな事態への対応方法をあらかじめ把握しておくことが重要です。
よく寄せられる疑問として、以下の3つを紹介します。
| ・医療機関へ搬送後、24時間以内に死亡した場合は算定できる? ・死亡月と最終訪問月が異なる場合は? ・1人の利用者に複数事業所で算定できる? |
それぞれの状況における具体的な算定ルールや判断基準を整理し、いざという時に慌てず対応するためのヒントとして役立ててください。
医療機関へ搬送後、24時間以内に死亡した場合は算定できる?
在宅でターミナルケアを受けていた方が容態急変により医療機関へ搬送され、24時間以内にお亡くなりになった場合でも算定の対象に含まれます。
これは、搬送直前まで提供してきた事業所の手厚いケア実績が評価される仕組みだからです。
算定にあたっては、搬送先の病院へこれまでのケアの経過を速やかに引き継ぐ手続きが求められます。
予期せぬ急変に慌てないよう、平時から緊急時の情報提供ルートを整えておくと、ご家族の不安を和らげる一助となるでしょう。
死亡月と最終訪問月が異なる場合は?
最終訪問月と死亡した月がまたがって異なるケースでは、原則として「お亡くなりになった月」の報酬として算定を行うルールが定められています。
※上記の取扱いは主に訪問看護等のルール
例えば、10月末日に最後のケアを提供し、11月1日にお亡くなりになった場合は、11月分の介護報酬として請求処理を進めることになります。
月をまたぐ看取り支援が発生した際は、請求のタイミングにズレが生じやすいため注意してください。
事務担当者と事前に状況を共有しておくことで、請求漏れやエラーを防ぐ効果が期待できます。
1人の利用者に複数事業所で算定できる?
複数の訪問看護等のサービスを利用している場合、ターミナルケア加算を算定できるのは、原則「1つの事業所」のみです。
※出典:厚生労働省「介護保険最新情報[令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)]」
複数の事業所がそれぞれ個別に加算を請求することは認められていないため、関わっている事業所間で事前に話し合う必要があります。
どちらの事業所が中心となって看取りを支えるのか、ケアマネジャーを交えて早い段階で協議を重ねておきましょう。
事業所間で密に連携を図ることで、利用者へのスムーズな支援体制の構築につながります。
ターミナルケア加算の算定前に要件と留意点を把握しておこう
ターミナルケア加算を適切に算定するには、サービス種別に合わせた算定要件の確認と、ご家族への細やかな手続きを事前に整えておくことが大切です。
具体的には、以下の3点を確認・留意しておきましょう。
| ・提供サービスごとの算定要件(訪問回数や連絡体制)の把握 ・ご本人・ご家族への事前説明と文書による同意取得の徹底 ・日々の細やかな記録と、多職種間の連携体制の構築 |
制度の趣旨を深く理解し、事業所全体で看取りケアの質を高めていくことで、利用者が望む場所で穏やかな最期を迎えられる環境づくりにつながります。
算定に向けた不安を解消するためにも、まずは日々の記録方法や緊急時の連携フローを見直すところから始めてみましょう。
また、在宅療養の継続が難しいケースや、退院後の療養先にお悩みの際は、「ホスピス型住宅」という選択肢もご検討ください。
受け入れ可否や入居までの進め方について、まずはお気軽にご相談ください。