【川下からの医療改革】ホスピス事業者による医療分野への浸透について
医療改革が行政”発”ではなく、「川下からの医療改革」となる場合のまさに本命、M3グループのCUC
ソニーのグループ会社でもあり、上場している医療系の会社で製薬会社を除くとすると、文句なしで最大手のM3グループから、ホスピス事業者等としてIPOしたCUCは、様々な意味で注目すべき存在ともいます。
それは、他のホスピス事業者と比較して、圧倒的ともいえるケイパビリティを有しいることで、医療業界の最上位職である医師に国内最大のネットワークを保有しているM3、すでに他事業者であればIPOのハードルにもなる医療法人等への経営支援・運営支援を業として、上場できることなどで、単なるホスピス事業者に留まらないCUCのIPOによる登場は、今後ホスピス事業者が世の中にさらなるインパクトを与える予兆にも見えます。
行き場のない医療の手が届かない社会問題を緩和しているホスピス事業者
アンビス、日本ホスピス、PDホーム、CUCなどのホスピス事業者は、社会的なイノベーションであり、2010年ごろから顕在化しつつあった、他死社会への対応、介護における労働機会の損失などの社会問題を緩和・解決することに大きな役割を果たしてきました。
特に我が国の行政はホスピス事業者向けの制度や認可などを一切設けていません。各ホスピス事業者がイノベーションして、我が国の行政制度にホスピスを当てはめたのです。そして、大和ハウスや積水ハウス、レオパレスやミサワホームなどのビルダーを説得して、資本を呼び込み、日本型の老人ホーム在宅型ホスピスを発明して、行き場のない患者、医療の手が届かない患者という社会問題を緩和したのです。
このようなホスピス事業者は、アンビスのような独資であれ、日本ホスピスのようなPEとの協業であれ、苦労して経営を軌道に乗せて、ホスピス事業者としてスケールしているのですが、CUCだけは相当に異質です。
ある意味では。CUCが資本力で圧倒的なM3グループであり、IPOの時点で、医療法人との独立性などの課題を内包せずに、経営支援・運営支援を業としていることは、資本力により10年程度は時間を買い取って短縮した特別な事業者と言えます。
東京証券取引所が医療法人との分離を要請することは紙面を割きませんが。
ホスピス事業者の次の方向性、病院等の医療機関の効率化・なぞの東証ルールで医療法人を遮断・・・
ホスピス事業者は、医師のいない病院の様な施設を、物件の取得から建設コストの削減、運営コストの低減、労務費のコントロールなど、考えられる努力を重ねて、切磋琢磨して競争しています。医師のいない施設で看護師や介護士の見守り体制で、入居者の命を守っている中での、経営努力です。構造的に病院の下請け業者であるホスピス事業者ですが、医療リソースを蓄えており、ホスピス事業者が、医療法人のみに経営が許されているクリニックや病棟などを経営した場合、経営の素人の医師が経営するよりも、プロフェッショナルな経営ができる、ホスピスとの連携により運営が効率的に実施できるなどの利点が発揮されます。
しかしながら、特に上場ホスピス事業者は、そもそもの成立起因が医療法人等を母体にしてホスピスが生まれているケースが多いにもかかわらず、東京証券取引所の審査フェーズでは、医療法人への経営関与を遮断しなければならない厳格なルールが存在ます。
これは、我が国の行政施策で、医療法人のみが病院経営できること、医療法人が非営利に近い存在で、東証と相容れないことなど、行政制度の問題なのですが、ホスピス事業者は、IPOするために、医療法人とそもそもあった関係を苦労して遮断して、上場するのです。
しかし、CUCはM3などのケイパビリティで10年先んじたスタートポイント
ここで異質なのはCUCです。個人や特定の医療法人ではない、M3グループのケイパビリティの発揮により、多数の医療法人への経営支援・運営支援を業として、上場期間中から、医療法人と堂々と関与して、医療法人の経営改善等を戦略的な中断を無しに実施できるのです。このようなケイパビリティを有しているのは、日本でも、M3グループかSMSぐらいです。
上場準備段階で、医療法人との関係を清算・遮断してから、プライム等で次の審査が不要な立ち位置への昇格、そしてそこから、医療法人等へのサービス展開を企画する他の上場ホスピス事業者とCUCの優位性の差は、年数にして10年程度ともいえるかもしれません。
しかし、どの上場ホスピス事業者も、医療法人が現在運営する病院やクリニックの事業改善等に目を向けるのは、必然の流れかもしれません。
ココロがある医療人としてのホスピス事業者
以前、関東の県庁所在地で、地元の医療法人が廃業したビジネスホテルを、安価な老人ホームとして転換して、そこに点滴などを付けた入居者を受け入れしていました。
ホスピスに関わる看護師や介護士の怒りはものすごいものでした
見守りのできない不自由な施設で重度の利用者をケアする、無責任な地場の医療介護レベルの低さ、劣悪な医療法人の老人ホーム運営について、ホスピスを運営する看護師・介護士は、「許せない思い」を語るのです。
それほど重視していない地区でしたが、大型投資に踏み切り、地域医療介護の質の向上のため、ホスピス事業者として出店を決めることになりましたが、医療に携わる看護師や介護士は「ココロ」があるので、よい医療や介護をしている真面目な企業体を好み、そうではない企業体に憤りを覚えるのです。
ホスピス事業者の方向性は医療の川下からの改革
今後、まちがいなく、上場ホスピス事業者を中心に、IPO等で獲得した資金を背景に、医療法人が独占している分野に乗り込み、まさに川下から、医療の改革を実施していく流れは止めようがないと思います。
ホスピス事業者の経営幹部たる、医師、看護師、介護士などは、一度は意に沿わないファミリー経営の医療法人の弊害に直面しており、命を守るアイデンティティから、それを正したいという無意識な性質をもっています。
経営努力にまい進して、効率的で開かれた上場ホスピス事業者が、地域で囲い込みモデルでむしろ病人を拡大再生産している医療法人へ殴り込みをかけ、それには、優秀で熱意のある医療人が協力すると思います。悪徳医療法人をホスピス事業者がぶっ潰してくれることを予想します!!
今後、上場ホスピス事業者を中心に、医療法人等の取得や病院の運営支援・経営支援が拡大することは疑いがありませんが、CUCが先述のように2ー3歩先んじています。アンビスや日本ホスピスに期待ですね!